教育系ライター「たなかくん」です。
さて、こちらの数字は何を表している数字だと思いますか。
端的に表すと、平成28年度の教員の精神疾患による病気休職者の人数となります。
教員の約8割がやりがいを感じながら働いている一方で、在職者数の0.53%という人数ですが、決して見過ごすことのできない問題が教員という仕事には存在しています。
20代前半と50代後半の教員に
多く見受けられること。
文部科学省の「学校教員統計調査」という資料を参考に教員の病気離職率を導き出すことができますが、これによると先ほどの精神疾患を含めた病気を理由に退職された教員の年代は20代前半と50代後半の教員に多く見受けられることが分かっています。
また、こうした精神疾患は300種類以上もあると言われていますが、こと教員の病気休職者に着目すると、うつ病という精神疾患が最も高い割合であることが報告されています。
実際、20代前半の頃に教員として働いていた筆者も「教員の仕事の過酷さ」から、うつ病のような症状が見受けられるようになり、民間教育への転職を経験しています。
そこで今回は「新任教員のうつ病に関する情報」をご紹介させていただき、新任教員として働きながらも様々な理由から心身の健康に悪影響を及ぼしている方が、少しでも自分らしく教育にかかわることができるよう、そのサポートをすることができれば幸いです。
Contents
うつ病を知る2つの考え方
では、うつ病とはどのような病気か。
広く周知されるようになった一方で、その認識はまだまだ誤ったものとなっています。
- 気の弱い人がなる
- 気の持ちようで治る
精神科の領域で「気分障害」と分類されているように、世間的にもうつ病は気分的なものと認識されていることから、こうしたイメージが定着しているのではないでしょうか。
本来の症状とは異なります。
脳に関する研究が未だ十分に解明されていないのと同様に、うつ病に関する研究もまだまだ仮説段階となりますが、それでも上記の誤ったイメージを訂正し、うつ病を正しく理解していくために、ここからは次の2つの考え方を見ていきたいと思います。
- 心のエネルギーについて
- 神経伝達物質について
ただ先に申し上げておきたいのは、うつ病という精神疾患は誰でもかかり得るものであり、それでいて決して精神論で治るものでもなく、適切な対処法を経て回復していくものであることを、まずはお含みおきください。
なので、様々な夢や希望を抱きながら教壇に登ったであろう新任教員のみなさん。
もしかして心身の健康に支障をきたしている自分を責めてはいませんか。
うつ病のような症状が表れていた僕自身も、毎日のように自責の念にかられていました。
責めないであげてください。
困難な状況に陥っても、なお子どもたちの夢や目標の実現に寄り添いたいと考えている自分に対して、まずは「よくここまで頑張ってきたね」と精一杯ほめてあげてください。
そして、少しずつ進んでいきましょう。
ゆっくりで大丈夫ですよ。
今回はボリュームのある内容となっています。ですので、気分が優れないと感じている方は、ゆっくりと自分のペースで読み進めてくださいね。
心のエネルギーについて
まずは心のエネルギーについてです。
心のエネルギーという考え方は
重要なポイントとなります。
そもそも心に関する領域であるため、うつ病を端的に説明するのは難しいことなのですが、「心のエネルギー」に着目してみますと、次のように表現することができます。
心のエネルギーの枯渇により全体の機能が停滞してしまった状態のこと。
さて、先ほど「うつ病は誰にでもかかり得るものである」とお伝えしましたよね。
そのヒントとなる考え方が、この心のエネルギーの枯渇であると考えています。
みなさんも失敗をした際、悲しくなったり落ち込んだりすることがあるかと思います。
教員の仕事を例に考えてみますと
- 授業で失敗をした
- 子どもたちが怪我をした
- 保護者からクレームを受けた
といった失敗から、教員でも学校に通うことが億劫になることもあるかと思います。
こうした状態のことを「心のエネルギーの減少」と捉えていますが、このような減少は何もうつ病の方のみに見受けられることではなく、本当に誰にでも起こり得る状態です。
ただ、うつ病の方の特徴として
- その放出量が大きすぎる
- その回復量が小さすぎる
といった傾向から心のエネルギーが枯渇してしまい、その結果、眠れなくなったり、食欲がなくなったりと様々な不調が見受けられることから注意が必要となります。
ただ、これ自体もうつ病の方に限った話ではないかもしれません。
しかし多くの場合、数日後には何事もなかったかのように回復していく一方で、うつ病の方は、いったん心のエネルギーの枯渇に陥ってしまうと、月単位で様々な不調が続いてしまい日常生活に多大なる影響を及ぼしてしまうため悩みの種となっているのです。
神経伝達物質について
次に神経伝達物質についてです。
うつ病は精神論で治すことができないと申し上げましたが、この誤った認識を訂正していく上で、脳内で分泌されている神経伝達物質が重要となります。
まだ仮説の段階であるため
参考程度にご覧ください。
そもそも脳という器官は約一千億個の脳細胞が軸索を伸ばし、シナプスという箇所において電気信号を介しながら情報伝達を行っている器官となります。
こうした脳内における情報伝達は、神経伝達物質の分泌や受け渡しによって行われていますが、うつ病の方の場合、この分泌量が不足している状態であると考えられています。
うつ病になるの?
100種類以上の神経伝達物質があると考えられていますが、ことうつ病にスポットを当ててみますと、セロトニンやノルアドレナリンなどが関係してると言われています。
本来ですと上記の神経伝達物質が適量に分泌されることで喜怒哀楽のコントロールを行っていますが、うつ病の方の場合、その分泌量が減少しているため、喜怒哀楽のコントロールが上手くできず、うつ病を発症しているのではないかと考えられています。
このように考えてみますと、仮説ではありますが何かしらの理論に基づいて表れている症状であるため、うつ病は決して理屈抜きの精神論で解決できるような問題ではなく、専門的な知識や周囲のサポートがあって初めて回復していくものなのです。
うつ病の症状について
ここまで、うつ病を正しく理解するために重要な2つの考え方について見てきました。
どんな症状が表れるんだろう?
うつ病の症状ですが、その重症度によって表れてくる症状も異なります。
例えば軽症の場合、心の症状としては誰でも感じるであろう不安や焦りが表れてきますし、身体の症状としては眠れないや食欲がわかないといった症状が見受けられます。
ただ重症の場合、次のような症状が何日も継続して見受けられ、日常生活において明らかに支障をきたすことから、うつ病の方にとって辛くしんどい症状となります。
- 憂うつ・気落ちする
- 不安・イライラする
- 何をしても楽しくない
- 何もする気がなくなる
- 罪悪感にさいなまれる
- 消えてしまいたい
- 眠りが浅くなる
- 何度も目が覚める
- 食欲がわかない
- 身体がだるい
- 疲れがとれない
- 自律神経の乱れ
上記の症状の他にも思考力や集中力の低下などがあり、いつもなら難なくこなしていた仕事も捗らず、その結果、自責の念にかられるという悪循環も見受けられています。
ただ何度も申し上げますが、このような状態に陥った場合は決して精神論でどうにかできる問題ではなく、適切な過程を経てゆっくりと回復していくことになります。
また上記の症状に関しましても、あくまで参考程度のものとなりますので、新任教員の方で何か気になるような症状が表れている場合は、これからご紹介させていただく対処法を参考にしつつ、必ず専門家の意見を仰ぐようにしてくださいね。
うつ病になる原因とは
では、うつ病になる原因について見ていきましょう。
現段階では十分に解明されていないうつ病ですが、それでも今までの研究によって、うつ病を引き起こすとされる原因は1つではないということが分かっています。
どんな原因があるんだろう?
うつ病の直接的な起因は過度のストレスとなりますが、うつ病に関係すると考えられている原因を整理すると、次の3つが重要ではないかと示されています。
- 性格要因
- 遺伝要因
- 環境要因
少し詳しく見ていきましょう。
性格要因について
みなさんは「メランコリー親和型」という言葉をご存知でしょうか。
これはうつ病の方に特徴的な性格とされており、次のような気質をもっています。
秩序を重んじ、仕事に堅実で、他人に対する配慮を怠らない常識的な性格。
少し難しい表現ですが、端的に「思いやりのある真面目な方」のことを示しています。
どう関係してくるの?
先ほどの心のエネルギーという考え方を活用してみますと、こうした性格の持ち主は、他と比較してみても、そのエネルギーの放出が多い傾向にあると考えられています。
例えばメランコリー親和型の方は、組織のなかで自分の役割を果たすことに達成感や充実感を感じる傾向にあるわけですが、その一方で、自分ではどうしようもない状況にさらされた場合、心身ともに疲れ果ててしまうことがあり注意が必要となります。
ただ、このような性格の持ち主だからといって、必ずしもうつ病を発症するというわけではなく、日常生活が上手く進んでいる場合、そこから得られる達成感や充実感からエネルギーの回復も見込めるため、うつ病の発症には至らないと考えています。
しかし、学級崩壊や人間関係トラブルといった失敗の連続にさらされると、心のエネルギーの放出も多く枯渇してしまうことから、うつ病の発症に繋がるというわけです。
遺伝要因について
うつ病の遺伝要因について未だはっきりと解明されているわけではありません。
しかし血縁内にうつ病の方がいる場合、その可能性は高くなると考えられています。
遺伝要因により、先ほどの神経伝達物質の分泌量、また神経伝達物質の受容体に何かしらの課題が生じていると考えられていますが、あくまでも仮説レベルとなります。
それ以上に重要となっていくるのは、以下の環境要因によるストレスであり、現在うつ病のような症状が表れている方も、遺伝要因だからといって、必ずうつ病を発症するというわけでなく、環境要因によるリスクがあることも、あわせてお含みおきください。
環境要因について
これまで様々な要因について見てきましたが、ことうつ病の発症という直接的な起因に着目してみますと、最後の環境要因が重要ではないかと考えられています。
いくつかの環境を例に挙げてみますと
- 大切な人の死や離別
- 大切なものを失う
- 人間関係のトラブル
- 家庭内でのトラブル
- 職場での役割の変化
といった場面が想定されます。
このように過度のストレスにさらされる場面が環境要因を考える上で重要となります。
しかし、このような環境要因は、ある程度の傾向性が見受けられた性格要因や遺伝要因とは異なり、様々な出来事がうつ病の発症に関係するため注意が必要となります。
ただ、うつ病の方によっては環境要因を特定することができない場合もあり、時として季節の変わり目である寒い時期になると調子を崩してしまい、うつ病を発症するというケースも見受けられることから、あわせて注意が必要となるでしょう。
教員の仕事は大変そうだね。
確かに多くの教員がやりがいを感じながら働いていますが、その一方で、学校現場で起こる様々な問題から、非常に多くの教員がストレスを抱えながら働いています。
実際に厚生労働省の「過労死等防止対策白書」では、教員の約8割が業務に関連したストレスや悩みを抱えながら働いているという結果も報告されています。
具体的なストレス項目を挙げてみますと
- 長時間勤務の多さ
- 職場での人間関係
- 保護者等への対応
- 子どもを取り巻く環境
といった項目が上位となっています。
ただ、こうした項目は各教員の性格によって、ストレスに感じるかどうかは異なってきますし、こうした項目は教員という仕事を続けていく以上、避けて通れない道です。
その上、うつ病のような症状が表れている方ほど「子どもたちのために頑張らなければ」と考え、ジレンマのような状況下に陥っているのではないかと危惧しています。
新任教員の過酷さについて
うつ病の発症に関係する様々な要因について見てきました。
教員という仕事自体、過度のストレスに遭遇することも了解いただけたかと思います。
さらに厳しい環境となります。
冒頭でも申し上げましたが、筆者自身、20代前半の頃に臨時教員として学校教育に携わっており、うつ病のような症状が見受けられ民間教育への転職を経験しています。
ここで経験則になりますが、こと新任教員という立場に着目してみますと、次の学校教育における特殊性からか、より過度のストレスにさらされているように感じています。
- 新任でも「先生」と呼ばれる
- 臨時教員でも同じ仕事をする
これは教育業界全体において見受けれられる課題かもしれませんが、新任教員は民間企業の新入社員とは異なり、新学期すぐに教育現場に立つという特殊性があります。
そのため子どもたちは例外かもしれませんが、保護者や地域住民からは周りのベテラン教員と同じような教育的ニーズが求められるため、多くの新任教員は責任感や緊張感から過度のストレスにさらされてしまう傾向にあると考えています。
また新任教員の中には臨時教員として働いている方もいらっしゃると思いますが、この臨時教員という立場も、より過度のストレスにさらされているように感じています。
本来は公務員の特徴として雇用の安定性が保障されていますが、臨時教員という立場は年度ごとの更新となるため、人事の関係から不安定な雇用形態となっています。
そのため本来ですと、安定した雇用形態において教員は専門的な教育活動に邁進することができるようになっているのですが、臨時教員の場合、将来への不安を抱えると共に、周りの教員と同じ業務にあたらなければならず、より多くの負担感を抱えています。
また臨時教員の場合、毎年の教員採用試験に向けて勉強しなければならないため、業務終了後でも教職教養や模擬授業の対策を行うなど、強いストレスにさらされています。
うつ病のような症状があれば
もしうつ病のような症状が表れた場合、どのような対策を講じればいいのか。
対策しやすくなります!
冒頭でも申し上げましたが、うつ病の発症には心のエネルギーの枯渇が関係しているため、もし気になるような症状があれば、次のような考え方が分かりやすいかと思います。
- 心のエネルギーの放出を抑制する
- 心のエネルギーの回復を促進する
ただ先に申し上げておきたいのは、教員という仕事はストレス環境から逃れることが難しい仕事となるため、基本的なアプローチとしては、心のエネルギーの放出を抑制することよりも、回復を促進することに焦点を当てて対策を検討することが重要となります。
では、その方法についてです。
これは様々なアプローチが考えられますが、大枠として整理してみますと
- セルフケアで対処をする
- 周囲のリソースで対処をする
といったアプローチに整理することができると考えています。
ここでの「リソース」とは、心理学の用語で「その人の問題解決に役立つもの」という意味をもっていますが、家族や友人といった「人」も重要なリソースであり、ことうつ病の方の場合、精神科医とった専門家は問題解決に向けて心強いリソースとなります。
では、心のエネルギーの回復に向けた対策について見ていきましょう。
セルフケアで対処をする
まずはセルフケアについてです。
あらゆる場面で試してみて!
個人的な価値観になりますが、教員の仕事柄、多くの時間を学校で過ごすため、勤務終了後だけではなく、勤務中においても心のエネルギーの回復が重要だと考えています。
その方法ですが、うつ病の治療法である「休養」を参考にしますと、心のエネルギーの回復には「自分なりのOFF」を設けることが必要ではないかと考えています。
運動をすることが好きな教員ですと、連絡帳の確認といった事務作業もありますが、業務の優先順位を大切にしつつ、休み時間には積極的に子どもたちと遊ぶことで、心のエネルギーの回復を図ることができるのではないでしょうか。
また運動が苦手な教員ですと、生活指導などの堅苦しい内容ではなく、自分の趣味について子どもたちと雑談のように話したり、子どもたちを連れて学校探検と称して、他のクラスの様子を見に行ったりすれば、心のエネルギーの回復に繋がるかもしれません。
こちらは勤務中とは異なり、新任教員をはじめとする、みなさんの性格や趣味を基にして「自分なりのOFF」を設けていただければと思います。
- 運動をする
- 読書をする
- 映画を観る
- 美味しいものを食べる
- ゆっくりと睡眠をとる
ただ場合によっては、自分の時間を確保することができない場合もあるでしょう。
そういった場合は、やはり勤務中と同様に優先順位を大切にしながら
- この時間は自分の時間にする
- OFFの間はひたすら楽しむ
といった自分なりのルールを設けてみるのもありかもしれません。
いずれにせよ、セルフケアを通して心のエネルギーの回復を図る場合、初めは不慣れな部分もあるかもしれませんが、完璧を求めすぎず「この時間くらいのんびりしていいよね」と、いつも頑張っている自分をほめてあげながら、OFFを過ごすことが大切です。
対策してみてください!
新任教員の場合、初めてのことばかりですので、分からないことが分からない状態だと思いますが、それでも少しずつでいいので放出量を抑える対策も考えてみてください。
- 少しでも勤務時間を短縮する
- 合わない人と無理にかかわらない
ただ新任教員の場合、その立場上、なかなか実践しにくい対策だと思いますので、その場合は「そもそも自分は何にストレスを感じているのか」といったストレス要因を発見するだけでも周囲のリソースを活用する際に役立ちますので、ぜひ試してみてください。
信頼できる人に相談をする
では、周囲のリソースについてです。
2種類に分類されます!
冒頭でも申し上げましたが、うつ病の認識がまだまだ誤ったものであることから、うつ病のような症状が見受けられる場合、その専門性の有無で周囲のリソースを分類した方が、対策を講じる上で、スムーズに実施することができるのではないかと考えています。
なので、うつ病の専門家ではない方を対象に相談をするならば
- 家族
- 友人
- 同僚
- 上司
といった方に相談を持ち掛けてみるといいでしょう。
相談する際のポイントですが、まずは自分の状況を把握するために、日常生活における悩みや不調に感じている心身の状態について素直に相談することができれば大丈夫です。
また自分の状況を話すだけでも、これまで蓄積してきたストレスをアウトプットすることができるので、心のエネルギーの回復にも繋がるのではないかと考えています。
あわせて心のエネルギーの回復におけるアドバイスももらっておくといいでしょう。
周りのヘルプを活用しながら
少しずつ回復に努めましょう!
いざセルフケアを始めようとしても思うようにできないことが往々にしてあります。
そういった場合、ぜひ家族や友人を上手く巻き込みながら、少しずつ自分なりのセルフケアを確立していき、心のエネルギーの回復に努めていただければと思います。
また管理職に相談することは、新任教員の場合、かなりの心理的負担になると考えられますので、信頼できる教員に仲介役を担ってもらうなど上手くリソースを活用すると、うつ病のような症状において有効な対策となるのではないかと考えています。
専門家に相談をする
最後に、うつ病の専門家についてです。
うつ病のような症状が見受けられた場合、次のような専門家に相談してみてください。
- 近隣の産業医
- 近隣の精神科・精神神経科
- 教育委員会指定の相談機関
- 公立学校共済組合指定の相談機関
こうした専門家に相談する際は、うつ病の症状に応じて選択する必要があります。
もしも、憂うつや睡眠障害といった症状が何日も続くような、ある程度の緊急を要する場合は、うつ病の専門家である精神科や精神神経科の医師に相談するといいでしょう。
詳しい治療法は専門的な資料を参考にしていただければと思いますが、おそらく新任教員をはじめとする多くの教員が、その治療法に対して不安感を抱えていると思いますので、ここでは簡単にですが、うつ病の治療法について記載させていただきます。
うつ病の治療法は「休養・薬物療法・精神療法」の3本柱から構成されています。
休養に関しては、心のエネルギーの回復のために行われますので、みなさんも想像しやすい治療法だと思いますが、やはり不安になるであろう薬物療法と精神療法。
薬物療法では抗うつ薬という薬を服用していきます。
この薬も「人格が変わってしまうのでは」といった不安を感じるかもしれませんが、うつ病は神経伝達物質に関係していると考えられているため、こうした抗うつ薬も神経伝達物質が有効に機能するようサポートしていく薬となります。
ただ抗うつ薬は胃腸薬のような即効性のある薬ではなく、効果が見受けられるまでに数週間くらいかかること、その間に眠気といった副作用も見受けられることから、服用を中断してしまう方もいらっしゃいますので、服用の際には注意ポイントとなります。
精神療法では認知行動療法などの治療法を活用して再発の予防を行っていきます。
上記の休養や薬物療法では、うつ病の原因である性格要因、いわゆる思考や行動のパターンを改善することはできないため、こうした精神療法は重要な治療法となります。
この精神療法も認知行動療法以外に様々な治療法がありますが、いずれにせよ、精神療法を行う際は、みなさんの悩みを傾聴した上で、少しでも自分の力でストレス環境を乗り越えることができるよう、思考パターンや行動パターンの改善を目的に行われます。
なので、少しでも安心していただければと思います。
医師との相性もあります!
こうした精神科は、相談にしても診察にしても医師との相性が関係するため、事前に口コミなどの評価を調べておくと、スムーズに相談することができると考えています。
ただ精神科の場合、薬物療法や精神療法を活用しながら短期間で、うつ病の方の困りごとに対応していくため「ゆっくりと話を聞いてほしかった」といったギャップが生まれることも往々にして見受けられますので、受診の際には注意ポイントとなります。
公的な機関も活用しよう!
精神科の受診を検討したとしても
- 自分はどんな状態なんだろう
- 精神科の受診は不安に感じる
- どの精神科に行けばいいんだろう
といった疑問点もあると思いますので、緊急を要しない場合は、まず自分の状況を把握するために、産業医や臨床心理士といった専門家に話を聞いてもらいながら、どのような対策を講じればいいのか、専門家によるアドバイスを求めてみてはいかがでしょうか。
ただ臨床心理士によるカウンセリングは、医療費がかさんでくることもありますので、その場合、まずは教育委員会や公立学校共済組合指定の相談窓口に問い合わせをし、福利厚生で産業医や臨床心理士といった専門家に相談してみるのもおすすめです。
また安価なカウンセリングを提供している相談機関も見受けられますが、その場合、専門的な資格を取得していない方が行っていることもありますので、その点も考慮すると、公的な機関が指定する相談窓口を活用するのが安心できるのではないでしょうか。
この他、スクールカウンセラーやこころの相談窓口といった選択肢がありますが、みなさんにとって心理的負担の少ないリソースを選択していただければ嬉しく思います。
- 教職員メンタルヘルス相談
- 〇〇県メンタルヘルス
- 〇〇教育委員会メンタルヘルス
休職や転職も選択肢として
上記の対策を講じても、働き続けることが難しい場合もあると思います。
休職や転職も選択肢として。
しかし、いざ休職や転職をするとなると
- 子どもや保護者に迷惑がかかる
- 周りの先生にも迷惑がかかる
- すぐに逃げるのはだめだ
- もっと頑張れるはずだ
といった思いから、それでもなお働き続けようとしているのではないでしょうか。
ただ、教育の最大の資本は教育者です。
個人的な価値観では、子どもたちの成長には教育者の「エネルギー」が必要であると考えており、それ故に教育者は心身の健康に気を配る必要があると考えています。
このように考えてみますと、子どもたちにかかわっている時間だけではなく、子どもたちの成長に向けて頑張ってきた全ての時間を含めて、みなさんの「エネルギー」を費やしてきたからこそ、今のような症状が表れているのではないでしょうか。
なので、自分を責めないでください。
ゆっくりと休む時間なんだと、今は自分を許してあげてくださいね。
休職や転職の注意点について
休職や転職を考えるとなると、次のような注意ポイントがあります。
- 重大な決断は後回しにする
- 管理職に状況を報告する
先ほども申し上げましたが、うつ病の症状には思考力や決断力の低下があります。
なので、うつ病のような症状が表れている場合、教員という仕事を離れる転職といった重大な決断は心のエネルギーが回復し、症状が改善してからにしてください。
しかしながら、うつ病の症状である「遠くに行ってしまいたい」という思いから、周りの方も含めて早期の決断に至るケースが往々にして見受けられますので、まずは教員の福利厚生を活用しながら、ゆっくり休養の時間を設けることが重要になります。
復職や転職に向けても
重要なポイントとなります!
実際に休職といった休養の時間を設けることができれば、少しずつではありますが、憂うつや不安、睡眠障害や食欲減退といった症状は改善されてくるかと思います。
ただ注意していただきたいのは、症状の改善が本来の目的ではなく、うつ病のような症状を治し、少しでも自分らしく働けるように休養をとることが本来の目的となります。
なので、休職の後には復職、場合によっては転職といった過程を踏んでいくことになりますが、いずれにしても、休職の段階から管理職に細かく状況を伝えておくと、休職後の活動がスムーズに行うことができますので、あわせてお含みおきください。
心理的に厳しいかも…。
新任教員の場合、その立場から管理職に相談することは難しいことかもしれません。
その場合は、先ほどの公的な相談窓口を活用したり、少しでも話しやすい上司や同僚の先生に相談したりすると、管理職に相談する際にサポートしてもらえると考えています。
本音で話すこともかなりの心理的負担になると思いますが、教育業界の性質上、思いやりのある方が多くいらっしゃる業界になりますので、みなさんの抱えている不安や悩みを真摯に伝えることができれば、しっかりと思いが届くはずです。
なので、少しでも心理的負担のかからないリソースを活用しながら、気になる症状の改善に繋がるよう、まずは休養に向けて無理のない範囲で行動してみてください。
休職や転職の情報はこちら
実際に休職に向けて行動を移すにしても、様々な不安や悩みがあると思います。
- どうすれば休職できるの
- 休職中の給料はどうなるの
- 休職中の学校はどうなるの
- 復職や転職はどうすればいいの
ColorfulEducationでは、こうした不安や悩みに役立つ情報を随時更新していく予定ですので、ぜひブックマークしていただいて、ご覧いただければ嬉しく思います。
自分らしく働くことを第一に
いかがだったでしょうか。
少しは見通しを持つことができましたか。
うつ病のような症状が表れていること自体、それまでの努力の結晶だと思っています。
ただ場合によっては、これから休職や転職をせざるを得ない可能性もあるでしょう。
ゆっくり進んでいきましょう!
とても個人的な価値観です。
正直な話、子どものことが好きならば、公教育でも民間教育でもどっちでもいいんです。
教育だけでも、いろんな働き方があって、いろんなアプローチがあるんです。
だからこそ言えること。
教員を続けるにしても辞めるにしても、まずはゆっくり休んでください。
そして、その間に改めて
- 自分はどんな人間なのか
- 自分は何がしたいのか
自分のために与えられた時間を活用して、たくさん自己分析してみてください。
うつ病のような症状に悩んでいた僕も、休養の期間を通して子どもたちのキャリアサポートがしてみたいと考えるようになり、現在は資格取得に向けて活動しています。
少しずつでいいんです。
ゆっくりで大丈夫なんです。
自分らしく働けるよう、自分らしく教育にかかわれるよう、一緒に進んでいきましょ。
何か気になることがありましたら、お問い合わせフォームから質問してください。
心理学や法律学の専門家ではないので、できることは限られていますが、それでもこれまでの経験を通して何かアドバイスできると思いますので、お待ちしております。
では、今回はここまで。
ColorfulEducation運営者:たなかくん